2021/09/07
B-Wave Promotion提携トレーナーの阿部純子氏をお招きし、『サッカーと身体』について伺うインタビュー企画。
前回では、阿部純子氏が施術家を目指したきっかけ、バレエとサッカーの共通点などをお話いただきました。
(インタビュー前編は こちら から)
今回は、後編。さらに詳しく『サッカーと身体』について、深堀りしていきます!
■ 『身体操作トレーニング』という概念
–ありがとうございます。続いて、阿部さんの身体操作トレーニングの概念的な部分を伺います。
普段のトレーニングで大事にされている概念はありますか?
まずはじめに、最終的な目的地でいうと、「状況に応じて動くことができる身体の前提を整える」ということだと思います。そのためには、身体をパーツで見ないで自分の身体を俯瞰的にトータルで考えるという概念が必要です。この概念を最も大切にしています。
–先程のお話でも出てきたことですね。
そうですね。
例えば、「脚を振る」という動作において、この動作は基本的に動きながら行わなければいけないですよね。いくら止まった状態でうまく脚が振れたとしても、それを走りながら、周りの状況を認知しながらできなければ意味がないので、「脚を振る」動作に固執しないで、自分の身体の状態をトータルで捉えられることが大事です。
なので、動作にとって最適なカタチ、最適な使い方に導けるような身体に持っていきたいと常に思っています。それは、普段その人が最もナチュラルに動けるカタチだと思うので、ままずはそこからのアプローチになります。
私がとても尊敬し、そして指導の際などに大変参考にさせて頂いているYJRさんや鬼木さんがおっしゃっている「人間は認識したカタチになる」というのは本当にその通りで、コップを持とうとしたら勝手にそのカタチになりますよね。その動作の時に、「手を開く」「手を閉じる」という動作に認識がいってしまうと、部分最適にはなるかもしれないけれど、必ずしも全体最適にはならない。その一つの動作の最終目的地は何かということを常に認識して、その状況に対して最も適切に動くことができることが大切です。
ただ、可動域や可動性などの身体のコンディションの問題で物理的にその動作に適切な動きができない場合があるので、そこにアプローチしていくということですね。
–なるほど。まずは何を認識するのかが重要で、そしてその認識したカタチになることができる身体に整えておくということが前提になると。
その通りです。つまり私のトレーニングは、認識した状況の最適なカタチになれるように、柔軟性や可動性を向上させることを目的としたトレーニングになります。
普段選手たちが行なうウエイトトレーニングも、パワーでこなしていくのではなくその動きに最適な出力を出すことができるカタチで行なえる身体を目指していく。
–つまり、さまざまなトレーニングで行なう全ての動きの土台となるトレーニングということなんですね。
はい、そこを目指しています。
無理やり数をこなしていくことよりも、例えばウエイトトレーニングにおいても「ここだったら自分の重心が感じられて、適切に上に持ち上げられているな」という感覚が重要で、それは結果的にトレーニングの効果を最大化することに繋がります。まさに身体のベース=土台を作るトレーニングです。
■ B-Wave Promotionの身体操作トレーニングとは?
–実際にどのようなトレーニングで落とし込んでいますか?
初めに4つのカテゴリーに分けて、チェック動作を行ないます。
まずは、全身性。繋がりを持ってバランスよく全身を使えているか。
次に、反応・反射。リアクションですね。サッカーでは予測できない状況に反応する必要があるからです。
3つ目は、筋出力。持っている筋肉量に対し適切な出力ができているかどうか。
最後に、柔軟性ですね。可動域や可動性が乏しいと認識したカタチになりにくい。先程話した通りです。
以上4点をまとめると、環境適応能力といえます。この環境適応能力のポテンシャルを初めの段階でチェックしていきます。
その後に、最低限知っておかなければならない身体的な知識をお伝えします。知識を取り入れることで、知覚に変化を与えるからです。
そのあと、先程行なったチェック動作を再度行ない、知識を取り入れたことによる変化を確認します。
それらを一通り終わった後に、施術に入っていきます。
–阿部さんの施術では、どのようなことを目的としていますか?
私の施術では、選手が本来持っているポテンシャルを出すことができるように、骨格的な位置関係(アライメント)を整えることをメインとしています。
–それは一般的なマッサージとは異なりますか?
そうですね。筋肉を緩めても骨格の位置関係が整っていないと、根本的な解決にはならないと考えています。骨の位置関係を調整し、「真っ直ぐ」を知った状態で再びトレーニングに入ります。この「真っ直ぐ」を知覚できることが重要で、自分の本来のアライメントを知らずに生活をしていると、真っ直ぐじゃないのに脳が勝手に真っ直ぐと認識してしまいます。一度「真っ直ぐ」を認知させることで、今後の軸となる部分を作ります。
–しかし、その後高強度のトレーニングや実際にサッカーをプレーしていく中で、再び骨の位置関係はずれていきますよね?
まさにその通りです。だからこそ、一度「真っ直ぐ」を知っておくことが重要になります。
例えば私が毎日付きっきりで施術を行なうことはできません。専属トレーナーにでもなれば別ですが、選手が個人で整えていく方法を知る必要があります。そのために「真っ直ぐ」を知り、ズレを調整していく。トレーニングの最後には、個人で整えるコンディショニング方法もお伝えして、今後に繋げていきます。
強調しておきたいことは、一日のトレーニングで身体が劇的に変化するわけではないということです。そんな魔法はありません(笑)
トレーニングを通して、知覚、知識を取り入れて、そのあとは選手個人がどれだけ積み重ねることができるかです。
–それができるかどうかがプロとアマチュアの違いですよね。
結局、自分の身体という替えの効かない「道具」をどのように使うかということになりますよね。「道具」の正しい使用方法を知らずに使い続けるのか、正しく知って使うのか。どちらがパフォーマンスを出せるかと考えると、間違いなく後者です。
–我々はサッカー選手として上に上がっていくために、「ポテンシャルを最大限引き出す身体作り」を掲げ、阿部さんへトレーニングサポートをお願いしていますが、そのような身体を作っていく上で、大切なことを教えてください。
やはり「自分の身体を知ること」から全ては始まります。先ほどと重複しますが、自分の身体は一生使っていく「道具」です。サッカーに限らず多方面のプロフェッショナルの方とトレーニングをさせていたただく機会がありましたが、トップオブトップの方々は自分の身体のことを知っている、あるいは知ろうとする努力をしている。さらにいうと、呼吸と姿勢に気を配っていない方はいませんでした。この2つはマストなんだなと思います。彼らは自分のナチュラルにいられる姿勢や、自分のコンディションを呼吸で感じることができます。
自然にできている選手は問題ありませんが、自分の身体で何かお金を生み出したいと思っているのにもかかわらず、その2つに無頓着な人は正直上にいくのは難しいのでは、という印象すら持ちます。それくらい重要なことだと考えています。
–「自分の身体」を知ろうとしている選手って、まだまだ少ないですよね。他にプロとアマの違いで感じることはありますか?
なんだかんだ言って、プロは人が見ていないところでやってますね。圧倒的に量をやっている。表に出ているのは、ほんの一部です。また、圧倒的な量をこなす環境を当たり前にする工夫もうまいですね。自分にとって大事だと思うことを繰り返し目にする機会を作るとか。
特別なことにしてしまうとわざわざやらなければいけないのでしんどいですが、彼らは歯磨きくらいにまで当たり前になるように自分のサイクルを作っていますね。
— B-Wave Promotionから、プロフェッショナルな選手を多く輩出できるよう、引き続きサポートよろしくお願いいたします!
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【Profile】
Junko Abe / 阿部 純子
2006年バレエスタジオAile設立。主宰・講師。東日本療術師協会 認定療術師。桜美林大学 非常勤講師。
解剖学的見地に基づいた身体操作方法および施術を通し、選手一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出すアプローチで、コンディショニングおよび指導にあたる。
トレーニングと施術を合わせた身体機能向上・メンテナンスプログラムは、さまざまなジャンルのプロアスリートから厚い信頼を得る。
2020年より、B-Wave Promotion提携トレーナーに就任。
弊社契約選手のフィジカル面のサポートを行なう。
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B-Wave Promotionでは、『日本が世界に勝つその日まで』を理念として、若いフットボーラーの海外挑戦サポート及び選手育成を行なっています。
提携トレーナーによる身体操作トレーニング、半年間の語学サポート、日本国内でのトレーニングサポート(不定期)、サッカー指導者によるプレーコンサルティングなど、若い選手達の育成トータルサポートを行なっています。
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